ゲスト:宇野大介氏
5月12日放送分
低いモーター音がしたかと思うとサイドテーブルの上の携帯電話が震えている。つい先ほどまで楽しんでいた夜の静寂の中での時間旅行から現実に引き戻されてしまった。仕方なく本を置くと携帯を取り上げる。「待てよ」この時間に携帯にメールが入るということは、この時間にメールを送った人がいるということでもある。送信者はどこかで起きているということになる。確かに世の中は便利になった。そして、直截的なことが多くなった。メールもリアルタイムに交信する。携帯電話そのものも直截的である。昔の黒電話は家族全員が使っていた。女の子に家に電話するとなると本人が出てくるまでにいくつもの関所があった。場合によって、関所を通してもらえないこともあった。しかし、今やその関所もない。今やメールに取って変わられたのであろうが「恋文」というものがあった。もちろん恋文を書くような年齢でもなくなったが、その言葉は遠いセピア色の思い出を連れてきてくれる。ラブレターとも違い、どこかに日本人が持っている奥ゆかしさをそこに感じてしまう。
ただ、恋文にしても、メールにしても心と心の交信が行なわれることによって、気持ちが通じ合ってくるから不思議だ。たとえ会わなくても心の交流ができる。これは電話でも同じである。道具は直截的になったが、伝えられるべきものは伝えられている。
さて、一年間、電話だけでお会いしていない人がいた。しかも一週間に一度だけ5分間しゃべるだけである。でも、不思議と心が通った暖かさを感じることの出来た一年であった(相手はどう思っているのかはわからないが)。そのお相手とは三井住友銀行の宇野大介氏だ。宇野さんとはあるラジオ番組で一年間、為替の見通しのインタビューをさせてもらった。根底部分の相場観、歴史観が似ているが故に楽しい会話が出来たと思う。その宇野さんが今週のゲストだ。宇野さんは、覇権国アメリカはその終焉に向けて歩み始めた、と考えている。私も同感である。すぐにこの結論は出ないが、変化というのは変わらないと信じているモノが変わるから変化なのである。
また、宇野さんは中国について興味ある見方を披露してくれた。多くのエコノミストが中国の発展を肯定しているが、宇野さんは懐疑的である。その答えは中国の消費スタイルにあるという。つまり、国、経済というのは徐々に発展していくものである。黒電話から、コードレス電話、大きな移動電話、そして携帯電話へと。しかし、現中国は、いきなりフルスペックを消費している状態である。すでに成熟しているのではないか、という見方である。
マネー塾の放送は20分であるが、心に伝わった20分であった。
